キャンピングトレーラー(ヨーロッパモデル)には、万一トレーラーが牽引車から外れてしまった際に、トレーラーの非常ブレーキをかけるためのケーブル「breakaway cable(ブレークアウェイケーブル)」が備え付けられています。
今回はこのケーブルを牽引車(ヘッド車)にどうやって取り付けるべきなのか?について考えてみたいと思います。
非常ブレーキケーブルの正式名称は?
このケーブルはあまり名前が統一されていないようで、日本では非常ブレーキケーブル、補助ブレーキケーブル、セーフティケーブルなどと呼んでおり、ヨーロッパ圏ではBreaking CableやBreakaway Cableと呼んでいるようです。
ヨーロッパの雑誌などではBreakaway Cableを使っていることが多いように見受けられます。
いずれも同じケーブルを指しますので、文脈で理解できればokです(逆に話すときも文脈から概ね理解してもらえます)。
Breakaway Cableの構造
キャンピングトレーラーの牽引中に、牽引車からトレーラーが外れてしまうと、非常に危険な状況に陥ります。
このとき、Breakaway Cableが適切に牽引車と結び付けられていると、このケーブルがハンドブレーキを引くことで速やかにトレーラーを制動します。
ほとんどのBreakaway Cableの先端(牽引車側)には、クリップ式の金具が取り付けられています。このクリップはループバックしてそれ自体を引っかけるための金具なので注意が必要です(後述)。
Breakaway Cableを牽引車にかける一般的な方法
筆者の乗っているキャラベルエアのサービスマニュアルによると、トウボールの周りに取り付けて金具をケーブルにはめ込むこととされています。
Attaching the breaking cable.
If the hitch fails the breaking cable acts as a brake for the caravan.
Attach in around the towball and snap the shackle onto the cable.
図にするとこのような形になります。
Towballが取り外し可能な場合は要注意!!
最近では「Towball(トウボール)が脱着できるトウバー」も増えてきました。
実際、筆者が牽引車として使用している僕のアウトランダーPHEVにもThuleのトウバーをインストールしており、トウボールは必要なときだけ取り付ける脱着式になっています。
このようなトウボールの場合は、牽引中にトウボールがトウバーから落下した際に、キャンピングトレーラーはBreakaway Cableもろとも外れてしまい、ブレーキが作動しないこととなり非常に危険です。
このため、ヨーロッパにおいては、脱着式のトウボールで牽引する際には、一般的にはBreakaway Cableの取り付け方法はトウバーメーカーの指示に従うこととされています。
では、脱着式のトウボールの場合、どのようにBreakaway Cableをセットすれば良いのでしょうか。
例えば、Brink社(2019年現在、ThuleのTowbar事業はBrink社に移管されています)では「ブレークアウェイケーブルは常にトウバーの特定のbreakaway pointに固定することができる」と記載されています。
If you have a Brink towbar, the breakaway cable can always be fastened to a specific breakaway point on the towbar.
図にするとこのような形になります。
実際、アウトランダーPHEVにインストールしているThuleのトウバーには、写真のようなbreakaway pointが用意されています。
このとき、日本を流通するキャンピングトレーラーの多くに備わっているBreakaway Cableの金具は、breakaway pointに直接クリップすることはNGとされています。
その理由は、万一トレーラーが牽引車から切り離された際に、適時適切にハンドブレーキを上げるだけの強度がクリップに担保されていない、とされているからです。
下の写真は、以前にbreakaway pointにクリップしたままトレーラーを引っ張ってしまったときのものです。
このときは車速ゼロからの走り出しであったことから、サイドブレーキを引いた状態にはなったものの、クリップの根元は広がり、ワイヤーも数本が断線してしまいました。
この取り付け方法で走行中に連結が外れた場合を想像すると、一瞬で大きな力が加えられるわけですからサイドブレーキを引くよりも先にbreakaway cableもすっぽ抜ける可能性は容易に想像がつきます。
したがって、このタイプのクリップを使っている場合は、以下のようにbreakaway cableを取り付けます。
ただし、トレーラーを所有している方ならすぐに分かることですが、この方法は全く現実的ではありません。なぜなら、日本で多く出回っているbreakaway cableのクリップは取り外しができず、さらにbreakaway pointの穴はクリップを通すには小さ過ぎるからです。
ではどうすれば良いのでしょうか?
答えは意外と簡単で、非常時において適時かつ適切にハンドブレーキを上げることができる強度を持った金具であれば、breakaway pointに直接クリップできるとされています。
6mm×60mmのカナビラが適合します。
まとめ
非常ブレーキをどこにセットすればよいのか?議論については、規定化された正解は無いものの、各種メーカーの取説やその背景などを考えると以下のようにまとめられます。
トウバーとトウボールが一体化したタイプのトウバーを使用している場合は、トウボールの首にBreakaway Cableをループさせます。
(注)写真は脱着式のTowballなのでイメージです
トウボール脱着式のトウバーの場合、およびヒッチメンバーを使用している場合は、Breakaway Cableの先端を8mm×80mmのカナビラに交換したうえで、breakaway pointにクリップさせます。
※ヨーロッパではこのようにクリップできるカナビラを組み込んだBreakaway Cableも販売されています。
キャンピングトレーラーの運用なんて自己責任だから・・・とも言われますが、非常ブレーキに関しては周囲を巻き込む事故にもつながりかねないことを考えますと、一般論の通りに運用しておくことで万一の事態が発生した場合には、自分自身も守られることになると思いますので、イロイロと調べて考えておきたいですね。